御由緒

重蔵神社は奥能登の中心地・輪島市の市街地のほぼ中央、日本海に面した河井町に鎮座しています。

河井町約1,800戸の産土神として仰がれるばかりでなく、平安時代中期に編纂された「延喜式」の神名帳にある鳳至比古(ふげしひこ)神社、あるいは辺津比咩(へつひめ)神社にあてられ、鳳至一郡の総社として重きをなしています。

主祭神

天冬衣命(あめのふゆきぬのみこと)

出雲から来臨して能登半島を平定したといわれる大国主名の父神です。

大国主命(おおくにぬしのみこと)

因幡の白兎を助けた心の優しい神様であり、縁結びの神様として有名です。

主祭神の他に、天照大神(あまてらすおおかみ)と建速須佐之男(すさのお)命の誓約から生まれた五男三女の神様など、十四柱を配祀しています。

相殿神

◆五男神

  • 正哉吾勝々速天忍穗耳命(まさかあかつかちはやひあまのおしほみみのみこと)
  • 天之菩卑能命(あめのほひのみこと)
  • 天津日子根命(あまつひこねのみこと)
  • 活津日子根命(いくつひこねのみこと)
  • 熊野久須毘命(くまののくすびこのみこと)

◆三女神(宗像三女神)

  • 多紀理比売命(たぎりひめのみこと)
  • 市杆嶋比売命(いちきしまひめのみこと)
  • 田寸津比売命(たぎつひめのみこと)

境内末社

子安神社、秋葉神社、金比羅神社、白山神社、稲荷神社、菅原神社、要石

御由緒

重蔵神社は、遠く崇神天皇の時代に創建されたと伝えられています。

天平勝宝八年(756年)五月、泰澄により寺院が建立され、以後、神仏習合の社として重蔵権現・十蔵大権現・重蔵宮とも称せられ、堂塔伽藍が建ち並んでいました。領主や衆庶から崇敬され、中世には地頭の長谷部氏をはじめ、温井氏(畠山氏家臣)による社殿の造営などが行われてきました。

天正十年(1582年)、能登に入国した加賀藩祖前田利家が武具と柱松明木を奉献、以後明治維新に至るまで前田家による松明木の奉献は恒例となりました。

明治五年(1872年)に郷社となり、同三十九年に神餅幣帛料供進社となりました。本殿は同三十九年に特別保護建造物に指定されましたが、同四十三年の大火で炎上。その後、本殿は旧に基づいて再建され、大正七年(1918年)県社に昇格しました。

宝物

木造菩薩面(重要文化財・東京国立博物館に寄託)

平安末期~鎌倉初期作の行道面(法会のとき、僧が行列して読経しながら道を練り歩くときに用いる仮面)といわれています。鎌倉・鶴岡八幡宮と同じタイプといわれ、日本有数の面に数えられています。明治三十三年に国宝となり、昭和二十五年重要文化財に再指定されました。

・その他

醍醐帝奉納神鏡、信連奉納銅瓶、藩候奉納親筆、泰澄大師所持錫杖、前大峰(人間国)寄進沈金塗屏風など。

歴史のはなし

朝市のはじまり

重蔵神社の参道は、毎朝、朝市の露店が道の両側にずらりと並ぶ朝市通り、河井本町通りにつながっています。

輪島の朝市は日本三大朝市の中でも最も歴史の古い朝市です。始まりは、神聖な場所である神社の境内で、祭礼日ごとに物々交換の市が立ったというもので、平安時代から千年の歴史をもっています。

室町時代には毎月四と九の付く日に市が立つようになり、明治時代には毎日、開かれるようになったようです。

輪島市最古の漆工芸「重蔵神社本殿内陣の扉」

永仁四年(1296年)に神社の本殿は建造され、百年後の応永四年(1397年)に本殿内陣の扉に朱塗りが施されました。

しかし海から吹き上げる潮風で破損が甚だしく、昭和五年(1768年)に塗師松本屋弥平次の手により、塗り替えられました。文献によれば、江戸時代中頃には輪島にかなりの塗師が存在し、漆器産地を形成していたことがわかります。

本殿は明治四十三年(1910年)の大火で焼失。しかしどういうわけか、この扉だけが輪島湾の海中に漂っているのを氏子が発見し、拾い上げ、翌四十四年に再建された本殿に使用され、今日に至っています。

海女と舳倉島

輪島市の約二十五km沖にある舳倉(へぐら)島は、海女(あま)の島として知られています。島には、永禄年間(1558~70年)に筑前鐘崎(福岡県宗像市)から渡ってきた海士(あま)が島の先祖だという伝承があります。

筑前鐘崎には宗像大社の三社、沖ノ島の沖津宮、筑前大島の中津宮、宗像市田島の辺津宮がそれぞれあります。海士は宗像三社の三女神を輪島でも敬うために、舳倉島に奥津比咩神社を建立、七ッ島の中津比咩、重蔵神社をそれぞれ比定したといわれています。地図を見ても舳倉島・七ッ島・輪島の位置関係と似ていて、昔、舳倉島は「重蔵島」とも書かれていました。

当社の社号である重蔵神社も元は重蔵(へぐら)神社と称していた説があります。

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